台北の中正区にある観光名所を巡ってきました。
国立台湾博物館、二二八和平公園、中華民国総統府、中正紀念堂は徒歩で見てまわることができます。
普通に行くだけでもそれなりに観光になると思いますが、やっぱり台湾の歴史を少しでも学んでみてから行ったほうが面白いと思います。
台湾の歴史を少しだけ学ぶ方法と、その歴史が詰まった場所を巡る観光スポットについてご紹介します。
台湾の歴史を学ぼう!
最初の台湾の印象
台湾の最初の印象というと、正直に言ってしまうと以下の3つくらいでした。
- 親日的
- 昔は日本が統治していた時代があった(だから日本語を話せる人も多い)
- 中国と別の国のような国じゃないようなよく分からない存在
多くの人もこれくらいの印象ではないでしょうか?
しかし、
どうせ台湾に行くのなら、もっと勉強しておきたい!
ということで、本1冊と映画1本で勉強してみました。
僕が台湾の歴史で重要だと思った点をご紹介しますので、気になった方はWikipedia等で調べてみるか、本や映画をご覧になることをオススメします。やっぱり歴史を学んだ方が観光は楽しくなりますよ!
台湾の歴史を学べる名著
副題の通り、1600年~2000年頃までの400年の台湾の歴史を知ることができます。
出版年が1993年なのでちょっと古いかもしれませんが、台湾の歴史概観を学ぶ上での名著として評価が高いようです。
年代順に並べた台湾の歴史はざっとこのようになります。
- 台湾にいた原住民による外来政権への対抗の歴史
- 1600年代(大航海時代)は欧州(オランダ、スペイン)が統治
- 次に中国の鄭氏政権、そして清国が統治
- 日清戦争に勝利した日本が台湾を譲り受けて統治
- 第2次世界大戦に負けた日本から中国(中華民国)へ台湾を返還し、中華民国(国民党)が台湾を統治し、その後に中華民国(国民党)が中国内での内戦に敗退して台湾に移転
このような複雑な歴史のため、おおまかに3種類の人たちが存在します。
- 原住民
- 本省人(日本統治時代終了までに移住した人々)
- 外省人(国民党として移住した人々)
台湾を理解するにあたって、これらの歴史と人の種類については抑えておきたいところです。
台湾の歴史を学べる傑作映画
第2次世界大戦の敗戦によって日本統治時代が終わるところから物語が始まります。
ダブーとされていた本省人と外省人の戦い(国民党政権による本省人の迫害)を描き、「二二八事件」を世界に知らしめた傑作映画が『悲情城市』です。
台湾の巨匠である侯孝賢監督による作品で、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、映画的にも歴史的にも重要な映画と見なされています。
映画の中身が素晴らしいこともさることながら、1987年に厳戒令が解除され、1988年に蒋経国(蒋介石の息子)が亡くなり、独裁政権が終わって民主化が始まったばかりという1989年に公開されたことも注目すべきだと思います。
悲情城市がテーマとした二二八事件の流れは以下のようになります。
- 日本統治時代は、インフラや教育機関が整備されるなど、ある程度の秩序正しさがあった(だからといって全てが正しかったという訳ではありません)
- 日本統治時代が終わり、中華民国(国民党)が統治することになったが、汚職や弾圧、治安悪化、経済低迷が起こる
- 小さな諍いから本省人による大きなデモ・反乱に発展し、外省人が武力で鎮圧した(二二八事件)
ここまでの歴史が分かっているだけで、観光スポットの見方も変わってくると思います。
台湾の歴史を巡る観光スポットへ行ってみよう!
国立台湾博物館
日本統治時代に、第4代台湾総督の児玉源太郎と民政長官の後藤新平を紀念するために建築され、台湾総督府博物館となった建物です。
現在は国立台湾博物館となっています。
我々日本人からすると、いかにも昔(明治時代)のどっしりとした造りだと感じます。
営業時間は9:30~17:00(月曜休館)で、大人30元(110円)と破格です。
ステンドグラス
▲博物館のロビーの天井はステンドグラスで、”児玉家の家紋である軍配団扇と後藤家の家紋である藤を組み合わせた図案” であるそうです。
2個おきに出てくる黄色の四角が”軍配団扇”で、一周続いている青い図形が”藤”でしょうか?
1階:特別展
▲1階は左右の部屋で別々の特別展をしていました。
1つめは台湾の鮭の展示で、発見されて100周年ということでした。
▲2つめ昆虫の標本などを集めた展示です。
飛行に焦点をあてているようで、基本的に羽を持っている昆虫を展示していました。
2~3階:常設展
▲2~3階は常設展になっており、主に、原住民についてと動植物についての2つの分野の展示があります。
▲台湾の原住民は歴史的に平野から山地へと追いやられていきました。そのため、高砂族や高山族とも呼ばれていました。
このあたりについても、台湾の歴史を学んで事前知識を持っておくと、展示の見方も変わってくるのではないでしょうか。
▲台湾原住民の各部族のミニチュア人形です。
他にも実物大の衣服の展示もあり、その色合いや模様は必見だと思います。
▲もう1つの展示は台湾の動植物についてです。
動物の模型や標本もあるので、苦手な方は注意が必要ですが、興味のある人にとっては面白いと思います。
二二八和平公園
日本統治時代に作られた台北新公園が、現在では二二八事件を経て、二二八和平公園となっています。
台北市民の憩いの場となっているようで、園内では子供連れの家族が散歩していたり、ベンチに座ってご飯を食べていたりと、現在は平和そのものといった雰囲気です。
▲この公園の一角に国立台湾博物館(写真の[5])があり、反対側の一角に二二八紀念館(写真の[2])があります。
公園内には動物も
▲台湾の人たちは動物が好きなようで、公園内にはリスや鳥がたくさんいますが、エサをあげたりして可愛がっているようでした。(日本人のように鳩が来ても逃げたりしない)
▲リスも人間に慣れているようで、気がつくと足元まで寄ってきていました。
▲国立台湾博物館の裏側には池があり、取り囲むようにベンチが置かれていて、台北市民が思い思いの時間を過ごしています。
鳥が飛んできて池の石に降り立ったり、水の中のエサを探していました。
二二八紀念館
▲二二八和平公園の一角にある二二八紀念館です。もともとは日本統治時代に台北放送局として建てられ、ラジオを放送していた施設です。
二二八事件においても、ここから台北で起こったことを台湾全土に伝えるべくラジオ放送が行われるという役割を果たしました。
営業時間は10:00~17:00で月曜休館です。入館料は20元(80円)ですが、二二八(2月28日)のため2月は無料でした。
日本語ガイドが秀逸
▲入口に冊子が置いてあり、中国語、英語、日本語バージョンがあります。
この日本語ガイドは、読み応えがあり、かつコンパクトに二二八事件についてまとめられています。秀逸な出来なのでこれを読んでから紀念館を回ることをオススメします。
▲二二八事件の引き金となった、二二七闇タバコ取締り射殺事件についての展示です。
2月27日にこの事件が起こったことがきっかけとなって、翌日(2月28日)に大事件へと発展します。
▲冒頭でご紹介した映画『悲情城市』のポスターも展示されていました。
二二八事件を世界に知らしめた功績は大きいと思います。
中華民国総統府
日本統治時代に台湾総督府として建てられ、第2次世界大戦の空襲で破損するも修復され、中華民国の首都移転後は中華民国総統府として利用されています。
周囲は憲兵と警察が警備しており、ライフル銃を持っていてかなり物々しい雰囲気です。
近くではカメラを向けることはできないのですが、道を渡ったところからなら撮影してもいいよと警察の方が教えてくれました。
平日の午前中に1階部分を一般開放しており、パスポートを見せれば、個人旅行なら予約不要、見学料も無料です。
中正紀念堂
中正とは蒋介石の本名であり、つまり中正紀念堂とは蒋介石を讃える場所です。
紀念堂の中にある蒋介石の銅像が向いている方角(写真と反対の方向)は、西の中国大陸です。国共内戦で負けて台湾に逃れた蒋介石(国民党)がいつか大陸を奪回するという意図が込められているそうです。
戯劇院と音楽院
中正紀念堂の両側には、戯劇院と音楽院があります。(▲写真は戯劇院)
自由広場
▲中正紀念堂は色々な方向から入れる(門がある)のですが、最も有名で、最も大きいのがこの入口(門)です。
中正紀念堂の意味
台湾屈指の観光地となっており、多くの観光客が訪れて、自由広場や中正紀念堂の大きさに圧倒されています。これだけを見ると、蒋介石はまさに台湾の英雄のようです。
しかし、歴史を学べば見方が変わってきます。
二二八事件で明らかなように、内省人は蒋介石(国民党)に迫害された歴史があり、台湾人全員が蒋介石のことを讃えているのではないことは明らかです。
つまり中正紀念堂は、蒋介石(国民党)を英雄にするためのプロパガンダなのです。
歴史を学べば観光がより楽しくなる!
複雑な歴史を持っている台湾ですが、日本も関わっているからこそ、身近に感じながら興味深く歴史を学べると思います。
歴史を学べば台湾観光はさらに楽しくなります。
冒頭に紹介した本や映画で予習した上で台湾観光をすることをオススメします!