【コラム】台湾の“英語ネーム文化”。日本でマネしてみたら気まずい空気になった話。

コラム
妻

台湾人の多くが英語ネーム

持っているのをご存じですか?

 

台湾の “英語ネーム文化”

台湾の文化で驚いたもののひとつが英語ネーム文化です。台湾では子供の頃に本名とは別に英語圏の名前をつける文化があります。

台湾人に聞いてみたら、英語ネームの決め方は様々でした。好きな絵本の主人公の名前にしたとか、英語の先生が「君はロージーっぽいから、今日からロージーね」という具合に決められたなど。

私も台湾の友人のことを英語ネームで呼ぶことが多く、正直、本名をよく知らない友人もいます。(台湾人同士でもそんな感じらしいです)

 

なぜ “英語ネーム文化” が存在する?

では、なぜ台湾に “英語ネーム文化” が存在するのか? 台湾人に直接聞いてみたところ、

台湾の友人
台湾の友人

う~ん・・・そういう習慣だから。

理由はわかんない!

どうやら多くの台湾人は明確な理由を普段から意識してなさそうです。

ただ「学校の授業で英語でスピーキングしたりディベートする時に、自分の英語ネームがないと不便だったと思う」と話している台湾人もいました。

その子は私と同じ30代ですが、私は英語の授業でスピーキング(ましてやディベート!)などした記憶がないので、台湾はその頃から実践的な英語教育が進んでいたのかと羨ましく感じました。

 

多民族国家、台湾。

そういった教育のたまものか、台湾人は日本人に比べて英語を話すことに抵抗がないと感じます。小さな飲食店の店員さんなんかも、臆せずにどんどん英語で話しかけてきます。

もちろん英語の実践教育が進んでいたからというのも一理あるかもしれませんが、それ以前に、“言語は単なるコミュニケーションツール”であるということを台湾人はよく心得ている気もします。

台湾には日本も含め様々な国に統治されてきた歴史があり、現在も外省人(中国大陸から来て台湾人として定住している人)、台湾原住民客家など様々な民族が暮らしています。

使用されている言語も、台湾華語(台湾で話されている中国語)、台湾語客家語など様々です。

台湾で最も一般的に使われているのは台湾華語ですが、若者も台湾語がかなり聞き取れますし、客家の友人の家は親戚が集まるとみんな客家語でおしゃべりするそうです。

例えば、お酒の席で乾杯する時、台湾華語では「乾杯(ガンベイ)」、台湾語では「乎乾啦(ホッダラー)」と言いますが、普段台湾語を話さない若者も「乎乾啦!(ホッダラー!)」と乾杯したりします。

日本語の「おばさん」「おじさん」なんかも台湾でよく耳にします。

そんな風に他者の言語をなにげなく使いこなす台湾人は、いろんな意味で本当に懐が深いなと尊敬します。そんな台湾人だからこそ、外国語の名前を持つことも自然と受け入れられるのかも知れません。

 

台湾人は海外好き

また、普段台湾人と話していて、海外への強い興味異文化への抵抗のなさを感じることもしばしば。

台湾で登録者数100万人を超えるYouTuberたちの国籍も様々ですし、外国人が討論するテレビ番組も大人気です。そういえば、日本で働く台湾人に、こんなことを聞かれたこともあります。

台湾の友人
台湾の友人

日本人って

ナゼこんなに海外に興味ないの?

確かに、海外旅行ひとつとっても台湾人の海外への出国率は驚異の数字。

例えば、総人口に対する台湾人の出国率72.5%。対して、日本人の出国率15.8%しかありません。(※1) 

多くの台湾人にとって、海外旅行は生活の一部。海外で現地の人と交流する機会があってもきっと英語ネームで自己紹介するのでしょう。

※1. 日本政府観光局 JNTO「台湾 外国旅行の動向」および「年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移」2019年のデータから一部抜粋。

 

漢字文化圏のコミュニケーション

でも、例えば台湾人日本人とのコミュニケーションなら同じ漢字文化だし、なんとなくいけるよね?と思ってしまいそうです。

確かに、日本の漢字と台湾の繁体字は全然違うものの、なんとなく見て読める漢字も多いは多いのですが、漢字が余計に混乱を引き起こすとも言えます。

台湾でも有名な木村拓哉さんを例に挙げますと、台湾人は「キムラタクヤ」ではなく「ムーツンターザイ」と呼びます。同じく台湾でも有名な渡辺直美さん「ドゥビィエンジーメイ」。漢字を台湾華語で発音するとこうなるからです。なので、口頭で「キムラタクヤ」と言ってもほぼ伝わらず、漢字を見せて初めて伝わります。

逆に、日本人がよく目にする中華圏の名前でも同じ事が言えます。例えば「林さん」「李さん」なんかは、たまたま日本語の発音でもある「リンさん」「リさん」ですが、「王(おう)さん」は台湾華語の発音だと「ワンさん」「陳(ちん)さん」「チェンさん」です。

このように、発音ベースで名前を覚える、もしくは覚えてもらうことは、同じ漢字文化圏でもお互いに非常にハードルが高いと思います。

子供の頃から英語教育を受け、ハリウッド映画を見て育った漢字文化圏のすべての民族にとって、「トニー」「スティーブ」などの英語ネームはアジア人同士であっても覚えやすいです。

 

“英語ネーム” を実践してみた!?

大半の日本人は、英語を話すのさえ抵抗がありますし(私も含め)、英語ネームを名乗るなんて気恥ずかしさの極みかもしれませんが、少なくとも英語が世界共通語と呼ばれているうちはマネしてみても面白い台湾文化だなぁと感じていました。

そんなことをアレコレと考えていた時、私はアメリカ人上司のもとで働くことになりました。そこで、この “英語ネーム文化” を率先して実践してみることにしました。

まずは自分に英語ネームをつけます。英語ネームを考える時に最初に浮かんだ名前は「ダイアン」でした。大好きなアメリカの女優、ダイアン・キートンさん。

妻

よし、

私は今日から「ダイアン」だ

そう心に刻んで迎えた入社日。アメリカ人上司を目の前に、私は勇気を出して「私の英語ネームはダイアンです」と言ってみました。しかし・・・

「あぁ、そうなんだ?・・・ ハハハ、おもしろい人だね」と、なんとも気まずそうな反応。上司は日本人の名前なんて普通に覚えれる日本語ペラペラアメリカ人だったので、私の前のめり感が一層際立つ事態に。

そんなこんなで、私が突然自分のことを「ダイアンだ」と言い出した話は、その後、酒の席で語り継がれました。

日本で英語ネーム文化を普及させるという私の野望への道のりは、まだまだ遠そうです・・・というか、シンプルに、もっと日本語わかんない外国人に使うべきでした。

 

英語ネームを実践したい人へ

ちなみに、私のように英語ネーム文化を実践したい人がいましたら、 “その名前、ちゃんとネイティブの発音?” ということを入念にチェックしてみてください。

以前、英語圏の方に「日本人はなぜ、“マイコー” のことを “マイケル” と言うの?  “マイコー・ジャクソン” でしょ?」と言われました。ぐうの音もでませんでした。くれぐれも「マイネーム・イズ・マイケル」なんて言わないように注意してください。

 

追記:英語ネーム文化に懐疑的な台湾人もいる

台湾人の友人がこんな記事をシェアしてくれました。

「台灣人爲何要取英文名字?人在異郷,名字是我切換人設的開關」

実際に海外で活躍する台湾人の中には、英語ネーム文化に対してある種、懐疑的な姿勢の人もいるようです。この記事を読んで、また新たな視点に気づけました。

中国語の記事ではありますが、ご興味のある方はぜひ読んでみてください!