2023年の年始めに、台北で「一一重構:楊德昌」と題して台湾の巨匠 エドワード・ヤン監督の回顧展&特集上映が開催されることが発表されました。開催時期は2023年7月~10月です。
今年は日本でも『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版が上映される関係で話題沸騰しています。
この回顧展、
かなり気合い入ってるらしい
我々も気合いを入れて
情報をお届け!
2023年、エドワード・ヤン回顧展 開催決定!
どんな内容?
「一一重構:楊德昌」と題して行われるエドワード・ヤン監督の回顧展。
エドワード・ヤンが残した様々な記録や文章を、プロジェクトチームが3年の歳月をかけて整理したそうです。ヤン監督の創作における核心部分を5つのテーマにわけ、監督独自の美学や精神世界を体現する展示となっているそう。
今回、初めて世の中に出る資料や、日本ではめったにお目にかかれない、監督が映画と並んで力を注いだ演劇関連の展示まであるそうです。監督の生涯にわたる創作の軌跡の全貌を目の当たりにできる、大規模な展示になる模様です。
開催場所は?
臺北市立美術館です。台北駅から地下鉄で15分ほど。
「一一重構:楊德昌」は臺北市立美術館の開館40周年記念のメインイベントとして開催されます。
臺北市立美術館と國家電影及視聽文化中心が共同で主催。臺北市立美術館の王俊傑館長と國立臺北藝術大學の孫松榮教授が共同でキュレーターを務めているそう。
臺北市立美術館は日本人に人気の中山エリア(有名な朝市もある所)からも近いので、台北観光がてらにも行きやすい場所です。
エドワード・ヤン回顧展 詳細
開催期間:2023.07.22-2023.10.22
場所:臺北市立美術館(1A・1B展覽室)
特集上映も同時開催!
別の場所では特集上映も
「一一重構:楊德昌」を開催する臺北市立美術館から少し離れた場所ですが、共同主催の國家電影及視聽文化中心でも、全く同じ期間中にエドワード・ヤンの特集上映が行われます。
予告編が解禁されました
監督作品+影響を受けた10作品を上映
上映作品は大きく3つのセクションに分かれています。
エドワード・ヤン監督作品に加え、1992年にイギリスの映画協会が発行した「Sight and Sound」という雑誌に掲載された、いわゆる “エドワード・ヤンが選ぶ映画史のトップ10” も併せて上映される予定。エドワード・ヤン監督が映画を志すきっかけとなった作品も上映されます。
また、1993年に是枝裕和監督が手がけたエドワード・ヤンと侯孝賢(ホウ・シャオシェン)のドキュメンタリーも特別上映として上映されます。
台湾のアート系ニュースサイトを確認したところ、上映プログラムは下記のようです。
上映作品一覧
1.エドワード・ヤン監督作品
『一九零五年的冬天』1981(脚本・製作助手)
テレビドラマ『十一個女人』第1話「浮萍」1981
オムニバス映画『光陰的故事』第2話「指望」1983
『海辺の一日』(海灘的一天)1983
『台北ストーリー』(青梅竹馬)1985
『恐怖份子』1986
『牯嶺街少年殺人事件』1991
『エドワード・ヤンの恋愛時代』(獨立時代)1994
『カップルズ』(麻將)1996
『ヤンヤン 夏の想い出』(一一)2000
『追風』2002-2005
2.エドワード・ヤンが選ぶ映画史のトップ10
『アギーレ/神の怒り』1972 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
『ブルーベルベット』1986 監督:デヴィッド・リンチ
『時計じかけのオレンジ』1971 監督:スタンリー・キューブリック
『8 1/2』1963 監督:フェデリコ・フェリーニ
『浮雲』1955 監督:成瀨已喜男
『マンハッタン』1979 監督:ウディ・アレン
『アメリカの伯父さん』1980 監督: アラン・レネ
『ノスタルジア』1983 監督:アンドレイ・タルコフスキー
『切腹』1962 監督:小林正樹
『ラルジャン』1983 監督:ロベール・ブレッソン
『L’Argent(金)』1928 監督:マルセル・レルビエ
3.特別上映
『映画が時代を写す時 侯孝賢とエドワード・ヤン』1993 監督:是枝裕和
『鉄腕アトム 宇宙の勇者』1964 監督:手塚治虫
※『原子小金剛(鉄腕アトム)』表記でしたが、1964年とあるので劇場版第1作目の『鉄腕アトム 宇宙の勇者』かと。詳しく知りたい方はご確認を。
『一九零五年的冬天』
『十一個女人』
『海辺の一日』
『追風』の上映は貴重!
特集上映の場所は?
國家電影及視聽文化中心で行われます。
この施設は2022年に開館したばかりで、台湾の歴史的価値のある映画を修復したり、数々のアート系作品を上映している文化的施設だそうです。
回顧展を開催する臺北市立美術館からは少し離れますが、台北駅から電車で30分ほどの距離なのでアクセスはそこまで悪くないです。
エドワード・ヤン特集上映 詳細
開催期間:2023.07.22-2023.10.22
場所:國家電影及視聽文化中心
追記
一一重構:楊德昌【現場レポ】
2023年10月、回顧展を見るために台北に1人旅へ。
開催期間が終わるギリギリ2日前になんとか予定を合わせて滑り込むことができましたので、感想などを書きたいと思います!(夫は残念ながら休み取れず・・・)
まずは会場の臺北市立美術館へ向かいます。MRT圓山駅から徒歩10分ほど。
圓山駅前は催し物などをやっていて賑やかでした。おしゃれな台湾土産を買えるお店『神農市場』の店舗もあります。
▲MRT圓山駅から臺北市立美術館まで歩く途中、信号を渡っている最中に『ヤンヤン 夏の思い出』のロケ地になったホテルである圓山大飯店が奥に見えたのが、なかなかおつでした。(奥のオレンジ屋根)
臺北市立美術館の入場方法
臺北市立美術館の入館料はおとな30元(約140円)です。
ちなみに、毎週土曜の17:00〜20:30は無料開放されています。もともと安いですが、土曜の夜が狙い目です。台湾は芸術関連の施設がめちゃくちゃ安くて、毎回驚かされます。
さて、チケットカウンターで入場券を購入し、まずはロッカーに荷物を預けました。40×30×20cmを超えるリュックや身のまわり品は、入場する前にインフォメーションセンター横にあるロッカーに預ける必要があります。ロッカーは6桁の暗証番号を設定するという日本では見たことがない方式で戸惑いましたが、スタッフのおじさんが親切に教えてくださいました。
「一一重構:楊德昌」を見た感想
結論から言うと、ものすごいボリュームと情報量で、エドワード・ヤンに対する敬意と親しみとが同時に感じられるような、とても素晴らしい回顧展でした。
映画監督としてだけでなく、1人の人間として、どういった人となりであったかも伝えようとする膨大な資料の数々。エドワード・ヤン愛に包まれた素敵な空間でした。お客さんの年齢も幅広く、私より若い人たちも目立っていた気がします。
1番感動したのが『エドワード・ヤンの恋愛時代(獨立時代)』の記録映像でした。チチとミンがタクシーの中で言い争うシーンの裏側や、ミンとリーレンのバー(クラブ?)のシーンの演出風景など、今まで何度もDVDで見返した大好きなシーンの裏側が見れて感激でした。
台湾の美術展の展示言語は基本的には中国語と英語なので、台湾での美術館巡りを諦める方もいると思います。ただ、現在はGoogle翻訳の精度もかなり高く、カメラをかざしただけで日本語に比較的綺麗に翻訳してくれるので、ぜひチャレンジして欲しいです。
今回、入場料の30元で常設展も併せて見れると言われましたが、エドワード・ヤンの展示だけであまりにも時間と体力を消耗しすぎて断念しました。
購入したエドワード・ヤン関連本
▲帰りに1階ロビーで今回のエドワード・ヤンの展示をまとめた図録「一一重構 楊德昌」と新しい書籍「憶 楊德昌」が出ていたので購入しました。
図録は1800元(約8,500円)と安くはありませんでしたが、今回の展示が隅々までまとめられていて、お値段相応かそれ以上の価値があると思います。
しかし、お目当ての「Fa 電影欣賞 楊德昌 八又四分之一」が売り切れていて意気消沈・・・。
ただ、この後ある場所でゲットできました!
▲帰りに中山駅の「誠品書店」へ。
▲「誠品書店」内にエドワード・ヤンの特設コーナーを発見。
そこに臺北市立美術館で売り切れだった「Fa 電影欣賞 楊德昌 八又四分之一」があるではありませんか!しかも、「釀電影」のエドワード・ヤン特集もあったので併せて購入しました。
・ 図録「一一重構 楊德昌」
・「憶 楊德昌」
・「Fa 電影欣賞 楊德昌 八又四分之一」
・「釀電影」のエドワード・ヤン特集
ロケ地巡りもオススメ!
台北に行ったら、エドワード・ヤン作品のロケ地巡りもおすすめです。
『ヤンヤン 夏の思い出』ロケ地
2000年公開(エドワード・ヤンの遺作)『ヤンヤン 夏の思い出』に関しては、ロケ地がまだそのまま残っている場所が多かったので、興味があればぜひ行ってみてください!おすすめです。
『エドワード・ヤンの恋愛時代』ロケ地
4Kレストア版が上映され話題沸騰の『エドワード・ヤンの恋愛時代』ですが、1994年公開(30年前)ということで、かなり時間が経っており、現在も残っているロケ地は少ない状況です・・・。
最後のセリフ「次はフライデーズでコーヒーでも」でおなじみの印象的なロケ地「フライデーズ」に2018年頃に行ってみましたが、さすがにもう90年代以前のロケ地巡りは厳しかったようです・・・。